腫瘍のページ

●よくある症状

□　皮膚にしこりがある。

□　乳腺が腫れている。または、しこりがある。

□　体表にしこりがある。

□　リンパ節が腫れている。

□　やせてきた。体重が減った。

 

●腫瘍でみられる病気

・犬の乳腺腫瘍

　メスの犬で一番多い腫瘍です。50％が良性、50％が悪性（そのうちの半分は悪性度が高く、経過が悪いといわれておあります）です。発生する年齢は、5歳以降に多くなり、10歳前後がピークになります。

　乳腺部分（胸から腹部）にしこりができます。腫瘍ができても痛みなどはありませんが、腫瘍が大きくなると、表面が赤く腫れたり、潰瘍を起こしたりすることがあります。

ただし、非常に悪性度の高い「炎症性乳がん」は、典型的なしこりにはならず、一見はただれた皮膚炎のような炎症を起こします。乳腺炎のように見えますが、非常に痛みや熱を伴います。

　中高齢のメスの乳腺部分にしこりができている場合は、乳腺腫瘍が第一に考えられますが、他の皮膚にできる腫瘍（肥満細胞種など）との鑑別が必要になります。当院では、まず、細胞診（しこりに注射針を刺して、細胞から診断）にて乳腺腫瘍を診断します。ただし、細胞診では乳腺腫瘍の良性か悪性かは確実には診断できません（仮診断として）。細胞診にて乳腺腫瘍の疑いがあれば、手術による切除を検討します。最終的に、切除したしこりを病理組織学的検査を行うことで、良性か悪性かの確定診断ができます。

　犬の乳腺腫瘍の治療は、全身麻酔下での手術による摘出です。薬による治療で乳腺腫瘍を消失させることはできません。

　一般的には、良性腫瘍と浸潤のない悪性腫瘍は、外科切除により予後は良好です。しかし、既に浸潤のある腫瘍は注意が必要です。また、「炎症性乳がん」は予後不良です。手術ではなく、鎮痛消炎剤等での対症療法となります。

　犬の乳腺腫瘍の発生と避妊手術との関連性が報告されており、生後1年以内に避妊手術をした犬と比べて、避妊手術をしていない犬や2歳以降に避妊手術をおこなった犬は、乳腺腫瘍の発生が有意に高いと報告されています。そのため、乳腺腫瘍の予防には、1歳未満での避妊手術が有効と考えられます。

 

・猫の乳腺腫瘍

　猫の乳腺腫瘍は、犬とは異なり、約90％は悪性で、強い浸潤性があり潰瘍を形成し、リンパ節や肺への転移が起こりやすいといわれております。老齢のメス猫に多くみられます。

　乳腺腫瘍ができても早期には痛みなどの症状なありません。浸潤性が強いため、潰瘍形成がおこり、出血や痛みなどが起こります。

　猫の乳腺腫瘍の治療は、犬と同様に全身麻酔下での手術による摘出です。薬による治療で乳腺腫瘍を消失させることはできません。猫の乳腺腫瘍は浸潤性が強いため、拡大切除（片側また両側乳腺全摘出）が推奨されます。ただし、摘出を行っても転移の可能性は否定できません。

　予防は、猫の乳腺腫瘍は犬の乳腺腫瘍ほど未だに明確にはなっていませんが、加齢の要因以外にホルモンの関与が考えられ、避妊手術をした猫の方が、避妊手術をしていない猫よりも乳腺腫瘍の発生が約半分であったとの報告があります。そのため、犬と同様に避妊手術が有効と考えられます。

 

・犬の肥満細胞腫

　肥満細胞種は、肥満細胞という免疫に関係する細胞が悪性に腫瘍化したものです。

　犬の肥満細胞種は、体の様々な部位に発生しますが、主に皮膚や粘膜に多く発生し、皮膚の腫瘍の中でも発生頻度の高い腫瘍です。中高齢に多くみられます。

　肥満細胞種は、さまざまな形態をとり、発疹のように小さいものから大きなしこり、1つの孤立している腫瘍から多発的に広範囲に散在しているものもあります。一般的には、赤みを帯びていることが多く、時には潰瘍を伴っていることもあります。

　診断は、細胞診（しこりに注射針を刺して、細胞から診断）にて肥満細胞種を疑います。

 

　外科的に摘出が可能な場所にできたものは、全身麻酔下での切除が第一選択になります。浸潤性が強いため、大きく広く切除が必要となります。化学療法剤や分子標的薬の使用も検討します。