●当院の整形外科について
現在、当院では、整形外科疾患に対して、外科手術以外の内科的管理による治療がメインとなります。整形外科の手術は専門医へ紹介させていただいております。
●よくある症状
□ 歩き方がおかしい
□ 足を引きずっている
□ 足を上げたままにしている
□ 長時間のお散歩ができない
□ 犬:段差を嫌がる
□ 猫:高いところに登れない
●整形外科でみられる病気
・膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう):犬
後肢の膝のお皿(膝蓋骨)が本来はまっている部位(滑車溝)からずれてしまう(脱臼)病気です。「パテラ」と呼ばれることもあります。
膝蓋骨が内側に脱臼する内方脱臼が多く、外側に脱臼する外方脱臼はまれです。
小型犬(トイ犬種)に多く(トイ・プードル、ポメラニアン、チワワ、ヨークシャー・テリア、パピヨン、マルチーズなど)、稀に、柴犬やゴールデン・レトリーバーなどでもみられます。
脱臼の程度により、4つのグレードに分類されます。軽度のグレード(グレード1)は内科的な管理(飲み薬(鎮痛消炎剤)、体重管理や生活環境の改善、サプリメントなど)で管理しますが、重度の場合(グレード4)は外科手術が必要となります。
たまにスキップをするような歩き方や後肢を後ろに伸ばすような動作をするといった行為が目立つ場合にはご相談ください。
(おうちで気をつけること)
・椎間板ヘルニア
犬で最も多い脊髄の病気です。猫では椎間板ヘルニアの発症はまれです。
背骨の脊椎(頸椎、胸椎、腰椎)の間にあるクッションの役割の椎間板が、背骨の中を通っている神経(脊髄)を圧迫することで発症します。
ダックスフンドを代表とする軟骨異栄養犬種(シーズー、コーギー、ビーグル、ペキニーズなど)は、他の犬種や人間と比べて、椎間板が硬いため、椎間板ヘルニアを発症して、重症化する確率が高くなります。
症状は、「段差を嫌がる」くらいの軽症から、「立てない」や「足が麻痺している(動かない)」までの重症まであります。重度の胸椎や腰椎の椎間板ヘルニアは、後肢の完全な麻痺と排便や排尿障害も起こります。
診断には、神経学的検査やレントゲン検査を行いますが、確定診断には、CT検査またはMRI検査が必要になります。
根本的な治療は、脊髄を圧迫している椎間板を除去する手術です。軽傷の場合は、安静や薬による保存療法で治療しますが、根本的な治療ではないため再発の可能性があります。
中等度の場合は手術による治療のほうが改善の可能性が高くなります。重度の場合は手術が必要となります。尿が出ない場合は、排尿の管理が必要となります。
脊髄のダメージが軽度であれば予後は比較的良好です。重度の場合には麻痺や排尿障害などの後遺症が残る可能性があり、手術を行っても改善がみられない場合もあります。
また、まれに「進行性脊髄軟化症」を併発する場合があります。この病気は、とても怖く、短期間に死亡してしまう病気です。椎間板ヘルニアなどによる重度の急性脊髄損傷により、脊髄の進行性壊死が起こります。強い痛みがあり、最終的には呼吸麻痺を起こし死亡してしまいます。有効な治療法はありません。